パイオニア・カーサウンド・コンテストで思うこと

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9月2〜3日に行われたパイオニア・カーサウンド・コンテスト。そこで思ったことをいくつか。

パイオニア・カーサウンド・コンテストも今年は15回目。音の文化創造をコンセプトに掲げて始まった当初の参加ショップは、わずか10数店舗のこぢんまりした集まりだったが、回を重ねるうちに参加台数が年々増加。いまやカーオーディオ界の一大イベントとなった。
今年のディーラーデモカー部門カロッツェリアXクラス1位は
サウンドステーション・ガレージショウエイ制作のBMW320
このコンテスト、ショップの取付技術、セッティング技術の底上げという意味では、大きな役割を果たしたと思う。最初の頃は、各ショップの技術レベルの差が大きく、正直、音がいいクルマと良くないクルマの差が大きかったものだが、このコンテストに参加し、他ショップの音を聴いたり、技術的な情報を得たりしているうちに、技術レベルが高くはなかったお店も、上のレベルに近づいてきた感じ。それでも、もともと技術レベルが高かったお店は年々、さらに高いレベルに達しているわけで、なかなか追いつき追い越せないのだが、最初の頃にはたまにあった「このお店には頼みたくないなぁ」と感じるお店は、いまや皆無といっていいと思う。その点は、このコンテストを続けてきた大きな功績だろう。

さて、数年前からユーザーカーの参加が可能になり、一般の来場者も受け入れるようになった。これは、カーオーディオファンの拡大には、いいことだと思う。しかも、今年は一般来場を土曜日とし、一般見物者が来場しやすくなった。

ところが、残念ながら、一般来場者が増えた感じがまったくしないのはなぜだろう。ゲストのパスを首からぶら下げた人を見かけても、どこか他のイベントやミーティング、オフ会等で見かけたことがある顔ぶればかり。たとえばこれからマイカーのオーディオをシステムアップしてみたいから、参考に覗きに来た子連れ夫婦といった人がいれば、ちょっとはホッとするのだが、まったく見かけない。いわゆるマニアの集まりである。

確かに、カロッツェリアの最高峰カーオーディオであるカロッツェリアXを装着したクルマが中心のコンテストだから、マニアが集まるりやすい側面はある。また、参加者は真剣に勝負しているから楽しいと思うし、コンテストを通じて得られるものも多いと思う。ところが、はたから見ると、何をしているのか、とってもわかりづらい。一般来場者が少ない理由は、これだろう。

これはなにも、パイオニア・カーサウンド・コンテストに限ったわけではなく、ほかのコンテスト形式のイベントでもそう。参加しなければ、何をやっているのかわかりづらいし、楽しさもわからないものが多い。じゃあ、参加してみればいいじゃん、と言われると話は終わるが、初心者が覗いて見て楽しく、いつか参加してみようかなと思わせるものがないと、カーオーディオ・ファンの底辺が拡大しないと思うのだ。

審査にも「?」と思うことがいくつか。たとえば、審査員の方が「今回の課題曲は2曲のバランスをとるのが難しい」というような趣旨のことをおっしゃっていた。確かに競技としては課題曲があり、それをよりいい音で鳴らすセッティングを競うという点では正しいと思う。が、競技には無関係の人がその話を聞くと「えっ、じゃあ曲によってセッティングを変えなきゃいけないってこと?そんなのありえない」である。

また、オーケストラの譜面を読むべきというようなことをおっしゃっていた審査員もいた。セッティングする上では、シビアなコンテストを勝ち抜くために、譜面を読んで曲をより深く理解したほうが有利かもしれない。しかし、はたから見ると「えっ、譜面読まなきゃ、音楽って聴けないの?そんな難しいなら高級オーディオは要らない」である。要するに、マニアックで難しすぎるから、一般の音楽好きが取っつきにくいのだ。

もっとも審査する上では、順位を決めるために差を付けなければいけないだろうし、参加者も上位を目指して努力するというのはわかる。が、上位に入賞しているクルマの音を聴いてみると、どれもいい。違いは、それぞれの個性といってもいい程度だ。だから、2位は1位より劣るわけではないし、人によっては1位よりも10位のクルマの音が好きという人もいると思う。オーディオも音楽も趣味のものだから、いくら好みが影響しないように採点するといっても無理な話で、そうなるのは当たり前だし、それでいいと思う。

それなのに、参加者はより高い順位を目指すし、順位表を見る側も、順位が高いショップのほうが優れていると受け取ってしまう。競技会である以上、参加している側が上位を目指すのはある意味、当たり前だが、あまり順位に一喜一憂しなくてもいいとは思うのだが。そのへんは、おそらくショップの皆さんはわかっていると思うのだが、ユーザーカークラスに参加しているユーザーは、順位を気にする人が多そうだ。また、参加者以外で、オーディオ取付の店選びの参考にしようと思っている人がいたら、順位だけで判断するのではなく、何台のクルマが上位に入賞しているか、毎年、安定して上位入賞を果たしているかといったあたりも見るといいだろう。歴代の入賞車はパイオニア・カーサウンド・コンテストのサイトでみることができる。

いずれにせよ、数あるカーオーディオのコンテストの中で、もっとも客観的かつシビアなコンテストであることは間違いなく、ぜひ、その良さは残しつつ継続してもらいたいものである。一方で、カーオーディオ・ファンの底辺を拡大する工夫が必要ではないかとも感じる。もっとも、一般来場者を受け入れるようになってから、まだ数年。ぜひ、よりよい方向へ、改善してもらいたいものだ。