老犬で満喫するカーAV生活-2. システム構築編-

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■チャプター2「電気的状態復帰と負担の少ないカーオーディオシステム構築を」

 前回どういういきさつで155TSが手元に来たかと、旧車におけるカーオーディオの重要性をお話ししたが、今回はその続き、旧車でカーオーディオを楽しむ基本的な注意点を紹介していこう。

 まず10年以上の車齢を持つクルマの場合、電気的にもかなり弱っている可能性が高い。カーオーディオの取り付けをスタートする前に、バッテリーの交換と
、オルタネーターの発電量チェックは必ず行っておこう。これはクルマ自身の調子を整え、さらなる延命措置に寄与することでもあるので、面倒くさからずしっかりやっておこう。とは言っても自分でできることは少ないので、なじみの修理工場やディーラーに持って行き、チェックして貰うのがベスト。ちなみにバッテリーは、性能的に問題なければ交換しなくてもよいが、2年以上使っているものは相当弱っている=音質的にもウイークポイントとなってしまうことがあるため、思い切って交換してしまうことをオススメする。製品については、好みにもよるが、とりあえずはドライタイプなど10万円前後する超高級品を選ぶ必要はない。一般的なウエットタイプの上位モデル(2万円前後のもの)であれば充分だ。

 次に、カーオーディオのシステムについて考えていこう。
 こちらについては様々な趣向があると思うし、それを否定するつもりは
全くないのだが、「クルマに無理強いしないシステム」を基本に考えるのがベターだ。10年以上の車齢を重ねる旧車は、1970~80年代のクルマほど電気的な弱さは露呈しないものの、古さゆえに無理の利かない部分が少なからず存在する。カーオーディオを取り付けても、余裕ある範囲に負担をとどめておくのが、旧車カーライフを上手に楽しむためのコツだ。
 そのため、アンプ内蔵ヘッドユニットと純正位置にトレードインできるスピーカーを使用するのが理想だが、一段の進化を望みたい人は、スピーカーの取り付けだけはしっかり行いつつも、パワーアンプの追加は(マルチチャンネルを使い)1台に収めることをオススメしよう(消費電力の少ないデジタルパワーアンプなどもGOOD)。いっぽう、サブウーファーを追加したい人は、重量的な負担が少なく、設置性もスペース効率も良いパワードタイプを優先して考慮しよう。

 さてこの基本的構想をアルファロメオ155TSに当てはめて考えてみよう。
 155TSは10年落ちのヨーロッパ車によくあるパターンで、フロントスピーカーはダッシュボード上に配置された10cmユニット。一応セパレート2ウェイではあるのだが、場所的にもあまり音質良好とはいえず、しかも左右でトゥイーターの置かれ方が違う! こいつのグレードアップが、いちばんの難関になりそうだ。
 というのは、いまどきのカーオーディオスピーカーといえば16cm2ウェイがメインで、小口径でも13cmまで。非主流である10cmタイプは、あまりラインナップが用意されていないのだ。いや、多くのブランドで一応カタログラインナップはあるので、正確には「グレードにバリエーションがない」といった方が正しい。「音質重視の高級タイプが欲しい」と考えても、ほとんど選択肢が用意されていないのだ。

「少数派だから仕方ないのかな」と思っていたら、実は軽自動車やトヨタ・パッソなどの小型車では、10cmスピーカー採用モデルが多いという。純正スピーカーのサイズを見てクルマを選ぶ人はいないと思うから、同じ悩みを抱えていることは結構多いのかもしれない。思い切ってドアにスピーカーを新設してしまうことも考えたが、欧州旧車だけでなく、軽自動車などのオーナーも参考になるよう、この“規定”は外すことなくシステムプランを進めていこうと思う。最終的な選択は、次回までひとまず保留にさせて欲しい。

 スピーカーサイズと置く場所に融通が利かない場合、頼りになるのはヘッドユニットのデジタルシステムだ。もともとクルマの車内は自宅の部屋と違って、音楽を聴く環境としてはあまりよろしくない状態であるのは皆さんご承知のとおり。それに輪をかけて不利な環境である155TSのデメリットを解消するには、高度なデジタル調整機能を持つヘッドユニットは必須となる。さらに155TSには、センターコンソールに1DIN分のスペースしか用意されていないという縛りもある。いまどきの国産車のように2DINがあればAVナビも選択肢に入ってくるのだろうが、残念ながら1DINユニットしか候補には残れない(ナビはPNDを活用するしかなさそうだ)。また、僕は車内でiPodを利用するため、音質的にアドバンテージのあるデジタル接続方式を採用するヘッドユニットを優先したい気持ちもある。
 それらの条件を考えると、最有力候補として上げられるのは、先日発売されたばかりのカロッツェリアDEH-P01だろう。こちらのデジタル調整機能は、その細やかさに定評があるうえ、実際のサウンドもなかなかの上質さを持ち合わせている。なんといってもパワーアンプまで付属するオールインワンシステムであることはありがたい。10万円という価格は決して安価とはいえないが、高音質モデルがこの価格で揃うのは嬉しいかぎりだ。
 デジタル調整機能とiPodデジタル接続を両立している機種が少ないため、対抗馬として上げられるものはほとんどなかった。ほぼ決定か、と思っていたところ、別のプランも浮上してきた。それは、単体のプロセッサーユニットを利用することだ。
 たとえばオーディソンbit oneは、31バンドイコライザーやタイムアライメント、クロスオーバーなどのデジタル機能を持つ製品。純正システムとの接続を実現するハイインプットからアナログ、デジタル入力までを備えているため、とても汎用性が高く、155TSのようなパターンにもしっかりはまってくれる。これとiPodデジタル接続対応ヘッドユニット、ケンウッドIK-70VやアルパインiDA-X305と組み合わせれば、DEH-P01に対抗しうるシステムとなる可能性がある。ただし単体のパワーアンプが必要となるため、コスト的にはこちらの方が多少上まわってしまいそうだが。

 このように旧車にあうシステムプランを考える場合、まずは「環境的要因」を書きだし、次に「機能的希望」を考慮してシステムプランを構築するのがよい。
 次の回では、具体的な製品を決定するとともに、取り付けに関するポイントを紹介していこうと思う。