悲しい独り言

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先日、某雑誌関係者から、ものすごい話を聞いた。直接、カーAVとは関係ないが、あまりに悲しく腹立たしい話なので、ここに記しておく。


今の雑誌の多くは広告が主導になっている。かつてのように、優れたもの、魅力的な製品は、有名だろうが無名だろうが積極的に紹介するという姿勢ではなく、広告が入る製品は記事として扱い、広告が入らなければ掲載しないという基本姿勢をとっている雑誌も多い。これはこれで大問題で悲しいことだが、そのことではない。

雑誌名やメーカー名、製品名を出すと担当者が特定されそうなのでぼかすが、昨年末に、ある雑誌である製品の特集を組んだ。その特集では、前述のように広告を入れてくれたメーカーの製品にはページを割き、それ以外の扱いは小さく掲載するようにした。

問題は発売直後に起きた。広告が入っていない某メーカーの広報担当者から出版社に、なにかたいそうご立腹の電話があったのだという。出版社の編集と広告部は、慌てて、メーカー担当者のもとを訪ねた。

そこでメーカー担当者の第一声。
「なぜ、ウチの製品の扱いが、こんなに小さいんですか?」

出版社側は当然のごとく、
「申し訳ありませんが、クライアントさんとクライアントさんじゃないメーカーさんは、同じに扱えません。今回は広告をいただけなかったので、御社の製品を取り上げないことも検討したのですが、小さいスペースながら紹介させていただきました」と答えた。

それに対するメーカー担当者の話が、あきれるしかない。
「ウチはクルマで言えばトヨタ、カメラでいえばキヤノンやニコンのようなもの。ウチの製品が載っていなくて○○特集って成り立つんですか? これを上司に見せたら私が起こられます!」とのたまったというのだ。

大会社だから、製品が取り上げられるのは当然というこの態度。しかも怒りの元は「上司に怒られる」なのだから、もうどうしようもない。出版社側は大人なので、その場は丁重に謝り穏便に済ませてきたらしいが、はらわたが煮えくり返るくらい怒っていたのは想像できる。

聞けば、その広報、新製品が出たからといって何の説明があるわけではなく、ニュースリリースを送ってくるだけ。あとは代理店任せだという。おそらく、代理店にチヤホヤされて、えらくなった気になっちゃったんでしょう。

普通、広報って自社の製品の魅力をアピールするために、出版社のみならず僕らのようないちライターとも連絡を密にとり、できる限り紙面等への露出を増やすように努力するものだと思っていた。少なくとも、僕らの業界は、そんな人たちばかりだ。それとも、この業界が幸運なだけなのか。

確かに、そのメーカーの製品は、広告が入っている雑誌に限っては大々的に取り上げられている。その取り上げられかたも「本当かよ」と思うくらいべた褒めだったりする。

つまりクライアント側は、金(広告)を払っているんだから、良く書かれるのは当たり前という姿勢だし、出版社側も、広告をもらっているんだから悪く書けないという習慣が身に付いてしまっているのだ。これでは、読者に真実は伝わらないし、読者が離れていくのは当たり前だと思う。

そんな出版社の姿勢に対しては、ほとんどあきらめの境地に達しているのだが、それに加えて、今回の広報のような思考の持ち主の登場である。もう、読者のためになる面白い雑誌作りができる時代には戻らないんだろうな…などと考えたら、悲しくなってしまった。